理学療法士とは
理学療法士とは、怪我や病気で体の不自由さを抱えている人を支援する仕事です。
私たちは、患者さんが日常生活や社会生活をより良く送れるように、リハビリを通じて体の機能を維持したり、改善することにあります。
普段は患者さんを相手にしていることが多い理学療法士ですが、自分の身体の不調を治せてしまうのも理学療法士の強みです。「痩せたい」「足の筋肉をつけたい」「首が痛いのを治したい」こんなことが理学療法士の専門分野でもあるので、患者さんだけでなく、家族や自分の為にもなってしまうのが魅力です。
ただ、病気や骨折を治せるわけではないので、症状によっては、医師に診察をしてもらう必要はあります。
不調の原因を調べて、治したり、アドバイスをすることができる、身体のスペシャリストが理学療法士です。
理学療法士の仕事の流れ【全7ステップ】
理学療法士といえば、「リハビリ」のイメージがあるため、歩く練習のような風景をイメージするのではないでしょうか。実際には、治療の前には様々な準備をしており、治療が終わっても、すぐに終了ではありません。理学療法士の仕事は色々あり、多くのセラピストはこのような順番でリハビリをしています。
まずは、理学療法士の仕事の流れを掴んでみましょう。
- 情報収集をする
最初は、患者さんの現状を把握するための情報収集です。これは、患者さんの健康状況、日常生活での困りごと、医師の診断結果などになります。
リハビリを必要としている方は何らかの問題を抱えているため、「過去に骨折したことがある」「心臓が悪い」「金銭的に厳しい」など、現在と過去の様々な情報を集めてリハビリに臨む必要があります。
リハビリをする上でリスクとなりうる病気を持っていることもあるので、安全にリハビリをするためにも情報収集は重要な仕事です。
- 検査測定をする
次に、患者さんの身体を検査し、どのような問題があるのかを判断します。検査とは、筋力や関節の角度の測定をしたり、バランス能力や歩き方の確認、体力はどのくらいかなどを見ていきます。
たとえば、歩くことができなくなった患者さんでも、筋力が落ちて歩けないのか、痛みが生じていて歩けないのか、歩き方に問題があるのか、要因は様々です。
原因を突き止めることが検査測定の意義であり、何も分からないまま治療に進むことはできません。
- 目標を決める
検査が終わったら、収集した情報と検査した結果を踏まえて、どのくらいの期間でどういった目標を達成するのかを考えていきます。
たとえば、脳梗塞の患者さんでは、「1か月後に自分で車椅子に乗れるようになる」「3ヶ月後に杖を使って100メートル歩けるようになる」などと具体的な数字を交えて目標を設定します。
また、その目標にはどういった根拠があるのか、その期間に設定したことは妥当なのかを説明できるように考える必要があります。そのためには基礎的な知識や、過去に似たような症例がないか文献を調べたりする必要があります。
目標が決まったら、患者さんと共有をし同意を得ます。患者さん自身も達成したい目標を持っていることがあるので、同じ方向性を向くためにも共有しておくことが重要です。
- 治療プランを考える
目標が決まったら、達成に向けてどういった治療をしていくのかを考えていきます。
筋力を付けるためにはどのくらいの頻度で、どのくらいの回数をするのか、どんな運動をして筋力をつけるのかなど、できるだけ詳しく決めていきます。
検査して分かった問題点は1つだけという可能性は低いので、それぞれの問題点に適したプランを複数考える必要があります。
- 治療をする
治療プランが決まったら、実際に運動療法、物理療法(電気治療や温熱治療など)、日常生活動作訓練(歩く練習や起きる練習など)と必要なリハビリを行います。
ここまで来てやっと、イメージのような平行棒で歩いていたり、杖を使って歩いたり、自転車を漕いだりすることになります。
また、患者さんに負荷のないリハビリになっているか、血圧や脈拍を測ったり、心電図を取ったり、急な体調の変化が起きないように注意深く確認することも重要です。
- 効果測定をする
治療を行ったら、定期的に治療の効果が出ているかを評価し、必要に応じて治療プランや内容を見直す必要があります。
検査測定をして洗い出した問題点が必ずしも正しいとは限りません。そういった場合に備えて効果測定をし、今の治療プランで問題がないかを確認し、改善がされていない場合は、柔軟に治療プランを変えていくことが必要です。
- 住環境を整える
患者さんが自宅への退院が近くなってきたら必要な環境設定を行うことも理学療法士の業務の1つです。
安全に生活できるよう、杖などの歩行補助具や、ベッドの導入を提案する必要があります。
ソーシャルワーカーや退院調整を行っている看護師が在籍している医療機関であれば、環境調整の必要の有無を伝えるなどの多職種間の連携が必要です。
理学療法士は5つの場所で働いている
理学療法士は、健康や身体機能の回復を支援する重要な役割をある為、働く場所は非常に広いです。
以下は理学療法士が活躍できる代表的な場所になります。
医療機関
病院やクリニックは理学療法士が最も一般的に働く場所です。
病院だけでも、急性期病院、回復期病院、維持期の病院と幅広く、患者さんの状態によって場所が異なります。
手術のような外科的治療や、薬で治療を行う内科的な治療があり、こういった医師の治療を必要とする場合は急性期の病院です。
病状が安定し回復期病院に移ると、リハビリを行うことがメインとなり、下がってしまった日常生活のレベルを取り戻すような段階になります。
回復期が終わると維持期に入り、生活の質や、人生の質を高めるためのリハビリを行います。ここまで積み上げてきた日常生活のレベルを下げない為にも維持期は重要です。
介護施設
高齢者介護施設や、特別養護老人ホームが介護施設に該当します。
ここで理学療法士は日常生活の自立支援、筋力維持、関節の可動域向上などを目指して、リハビリを行います。
介護老人保健施設では、自宅復帰を目指してリハビリを行うことができる施設になります。
地域社会
地域社会での活動では、自宅に住んでいる高齢者に対して、自宅やリハビリテーションセンターでリハビリを行うことになります。
医師の治療は必要ではありませんが、生活能力の維持や向上が必要な場合にリハビリを行います。
スポーツチーム
スポーツ分野では、プロや企業の選手の身体機能の維持や怪我からの回復サポートを行います。
競技でパフォーマンスを発揮しやすいようコンディショニングを行ったり、予防的なリハビリを行うことも理学療法士の重要な仕事です。
教育、研究機関
大学や専門学校などの教育機関では、未来の理学療法士を育てるために教育を行っている理学療法士もいます。
また、リハビリテーション分野の技術の発展に貢献するために研究に力を入れている理学療法士も存在します。
理学療法士とはどんな人を相手にしているのか
理学療法士は、一言で言えば、ほとんどの方が対象になります。
高齢者のリハビリだけではなく、子供や学生まで幅広く健康問題を抱えている方々のリハビリを行います。
その中でも代表的な病気を紹介します。
中枢神経疾患
脳卒中(脳梗塞や脳出血)や外傷性脳損傷(外傷性くも膜下出血)などの中枢神経系の障害を持つ患者さんは、リハビリの主要な対象です。
中枢神経とは、脳や背中のあたりに通っている脊髄のことを指します。全身から集まってきた情報を脳に伝達したり、全身に指令を出したりする役割を持っています。
これらの患者さんは、手足の麻痺や筋肉のこわばりが強くなったり、集中力が続かない、言葉が出てこないなど、症状はたくさんあります。
整形外科疾患
リハビリといえば整形外科のようなイメージがあると思います。私も理学療法士を知ったきっかけが、学生時代に怪我をしたことでした。
整形外科は骨折、脱臼、ヘルニアなどの患者さんになります。事故やスポーツで骨折をして手術をしたためリハビリをしたり、腰痛の方にトレーニングの方法を教えたりします。
高齢者の場合は、変形性膝関節症といった膝がO脚やX脚になり痛みが出て歩けなくなってしまうことで手術をする場合などもあります。
呼吸器疾患
肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器の病気を持つ患者さんに対して、理学療法士は呼吸機能の改善をサポートしています。
COPDとは、たばこを吸っている方がなりやすい病気になります。
呼吸器の病気がある方は、酸素の取り込みや二酸化炭素の排出がうまくできないことで息切れがしやすかったり、呼吸が苦しくなってしまったりします。そんなときに理学療法士がリハビリをして呼吸の仕方や歩き方の指導を行います。
また、呼吸器疾患は高齢者だけでなく、子供の肺炎等でもリハビリをしたり、最近ではコロナウイルスでリハビリをするケースもあります。
心疾患
心筋梗塞や狭心症といった心臓の病気を持っている人に対しても理学療法士はリハビリを行います。
心臓の病気の方は、再発しないように予防することがとても重要になってきます。そのために運動や食生活の改善が必要になり、運動を理学療法士が指導することになります。
通常、集団で一緒に体操をしたり、自転車を漕いだりしています。
内科的疾患
糖尿病など生活習慣病を持つ内科的な患者さんに対しても、理学療法士は運動療法を通じて患者さんの指導やサポートをします。外科は手術をしていますが、内科は点滴や薬で治療をするという違いがあります。
糖尿病は心疾患同様、集団で体操や筋力トレーニングをして病状の進行を予防したり、食生活の改善を栄養士さんに教わったりしています。
また、がんの患者さんにもリハビリをしています。抗がん剤を使って治療をしながら、体力を落とさないようにリハビリをします。
がんの患者さんは、抗がん剤の副作用で体調が悪くなったり、入院が長引くこともあるため、気分転換として運動を行っていたりもします。
廃用症候群
廃用症候群は長期間の寝たきりや運動不足によって、日常生活レベルが下がってしまった方を指します。そんな時に理学療法士は、筋力アップや生活レベルの回復を目指してリハビリを行います。
入院中に限らず、高齢者は家でごろごろしていて運動不足になりやすいので、予防のために運動をしたり、リハビリの大事さを指導することも最近では理学療法士によって行われています。
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